ローゼンの雑記帳

ローランにして薔薇の末裔にしてソウルメイト!の雑記!

最後のお話

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愛した薔薇は、魔法使いでした――――。

 

 

偶々、其処に居たのが薔薇でした。

とても美しい、真紅の薔薇でした。

偶々、愛したのが薔薇でした。

棘があることすら知らずに

私は其処に立ち止まって

薔薇の差し出した手を私は自ら選びました。

 

私が選んだ薔薇は、魔法使いでした。

私の涙も笑顔も自在につくりだせる、魔法使いでした。

 

そんな気まぐれな魔法使いは、

無責任にも立ち去ろうとしました。

その腕が棘だらけであることを知りながら私は

必死にしがみつこうとしました。

私は真紅に染められました。

 

それでも敵わないのだと悟った私は

正座をして、手をついて、頭を下げました。

「あなたのおかげで幸せでした。ありがとう。」

顔をあげると、無慈悲な魔法使いは

無慈悲な魔法使いは、泣いていました―――。

 

そして、そして。

私の愛した薔薇は、真っ赤な薔薇は

泡となって消えました。

私の世界から、消えました。

 

 

唯、

確かに其処にはかつて薔薇がいて

確かにかつて薔薇は

その棘だらけの腕で私を抱きしめてくれて

確かに其処には幸せな日々が在った

其れだけは、確かです

 

 

残された私は

魔法使いの幸せを願います

 

どうか、私では叶わなかったけど

どうか、今日からの日々があなたにとって幸せなものとなりますように。

 

 

私のお話は、此れでおしまいです。

作り話だと思うのならそれでもかまいません。

あの薔薇は確かに、真っ赤に、それこそ誇りのように、咲いていたのですから。