「What do you live for?」(超短編)
What do you live for?
「ねぇ、カイ。カイは何でも知ってるのよね!!」
「もちろんだよ」
カイは何でも知っている、とミリーは思っている。
“何故飛行機は飛ぶの?”とミリーが聞けば、カイは答えてくれる。
それはとても難しくてミリーにはわからないけれど、
ミリーはカイの話を聞くのが好きだ。
「ミリーは何も知らないんだな。」
呆れるカイ。
カイは将来、国の知能となるように教え育てられているが
ミリーはそんなこと知らない。
ある日。
ミリーはふと、疑問に思った。
「ねぇ、カイ。どうしてあの葉っぱは春は赤で秋は緑なの?」
「え…」
「普通は反対よね。ね、何故あのお花は桃色なのかしら…カイ?」
珍しく固まっているカイ。
「…知らない」
目を丸くしたのはミリーだった。
「知らない…の?カイが?」
カイは何でも知っている、とミリーは思っていた。
「だってそんなこと誰も教えてくれなかった。そうだ、そんなこと知る必要ないんだ。」
戦争に勝つ為、国を豊かにする為の知識しか、カイは持っていなかった。
「そんなこと、世界にとっては無意味なんだよ。」
それなら…とミリーは悲しそうに言った。
「あの葉っぱが赤から緑になるのも、あのお花が桃色なのも世界には意味がないのなら、私がお転婆で泣き虫なのも、パパが笑顔なのも、意味ないのね。」
何も答えられないカイにミリーは続けた。
「カイが優しいのも、私がカイを好きなのも、みんなみんな、意味ないのね…」
「違う…違うよ!!」
叫んだカイを見て、ミリーは首を傾げた。
「違う…の?何故、カイが泣いているの?」
カイは生まれて初めて、知識と気持ちが矛盾することを知った。
「僕には…、僕にとっては意味あるよ!!」
「…よかった。」
必死に訴えるカイに、ミリーは本当に嬉しそうに微笑んだ。
…きっと、僕よりもミリーの方が色々知っている、とカイは思った。
そして自分の生きる意味を知った気がした。
(僕は国の為に在るんじゃない)
これからはミリーの問いに全て答えられるようにしよう、と思った。
「ねぇ、カイ。何故あの花は…」
「それはね…」
I live for you.
Fin.