「Etoile」(超短編)
Etoile、それは…
「ねぇ、エル(Aile)、貴方に会わなければこんな闘争しなくてよかったのかな」
少女…エトワール(Etoile)は哀しげに呟いた。
見上げた空は限りなく蒼く。
「ねぇ、貴方に会わなければ、皆が私の為に言い争うことなんてなかったのかな」
…一羽の鳥が彼方へと飛んでいった。
「大好きだった。いや、今でも好きよ。」
鳥が消えていった場所をひたすら見つめつつ、
でもね…と、エトワールは続けた。
「皆がやめろって言うの。何故かしら…?」
大好きなのに。
エトワールが呟いた言葉はあの鳥のように、彼方へと吸い込まれた。
「エルに会わなければ、こんなに辛い思いしなくてよかったのかな」
エトワールはふと思った。
「エルも今、辛いのかな?」
そうだとしても結局自分には何もできなくて。
そんなこと叫んでも届かないことはわかっていて。
ただ、一つ確かなこと。
「それでもね、エル。私は貴方に出会ったことを後悔なんてしないわ。」
その名前のように飛んでいってしまった少年を想う。
「だって皆と出会えたのもエルのおかげだし、あの日々が私にとって幸せだったのも真実だから。」
少女は言った。
「私ね、例えこれから他の誰かを好きになってもエルのこと多分、ずっと“好き”よ。」
哀しげに、それでも微笑みながら。
「私はこの名前のように輝けるかしら」
少女はゆっくりと歩きだした。
思い出を過去の光として埋葬するのではなく
理想の過去にただ縋るのではなく
無理に忘却するのでもなく
ただ、想い続けながら…。
それは、輝く星。